収益不動産を購入し、オーナーになると、家賃収入を得ると同時に賃貸経営がスタートします。
不動産賃貸経営には、入居者の募集、契約業務、賃料管理、クレーム対応、物件の点検や清掃など、多岐にわたる管理業務が発生します。それらの管理業務をオーナー個人で行うことは現実的でなく、ほとんどのオーナーは不動産管理会社に業務を委託することになります。
本記事では、不動産管理会社の選び方や注意すべきポイント、実例を紹介し、当社での取り組みも合わせて解説します。
管理会社の選び方で「収益」が下がる!?
物件の価値を守り、収益を得るためには、管理会社選びは非常に重要です。
ずさんな不動産管理会社を選んでしまうと、見込んでいた収益を得られないばかりか、大きな損失を被る可能性があります。
1. 管理会社の業務
管理会社の業務は、大きく分けるとプロパティマネジメント(PM)業務とビルメンテナンス(BM)業務の2つに分けられます。
- プロパティマネジメント(PM)業務
入居者の募集や契約、集金、管理など、賃貸管理全般を行う。 - ビルメンテナンス(BM)業務
巡回や清掃、設備点検など、物理的な建物管理を行う。
管理会社がこれらの業務を適切かつ円滑に行うことで、物件の価値が維持され、安定した収益を確保することができます。
2. ずさんな管理会社に委託することのリスク
管理会社の中には、必要なメンテナンスを怠ったり、不透明な料金設定をしているなど、ずさんな運営を行っている会社も存在します。
このような会社に物件管理を委託してしまうと、以下のようなリスクが発生する恐れがあります。
- 収益・物件の価値の低下
定期的な点検やメンテナンスが行われないと、建物や設備の劣化が進み、物件の価値が低下します。それらを怠ると、事故や故障を未然に防ぐことができないだけでなく、将来的に修繕費用が増加するリスクがあります。 - 入居者満足度の低下
入居者からの不満・要望などへの対応が不十分な場合、入居者の満足度が低下し、退去率が上がるリスクがあります。
ちなみに、不満として挙げられる項目は「上下階、左右の部屋の音が気になる」など騒音に関するもの、「共用部やゴミ置き場が汚い」など管理面に関するもの、「エアコン・給湯器の故障」など建物や設備の経年劣化に関するもの、賃料・更新料への不満があります。
不満が募れば退去を申し出る入居者が増え、それは空室リスクにも繋がります。
管理会社には、丁寧でスピーディーな対応が求められるでしょう。
- 法令遵守の不足
法定点検には、主に7つの点検項目が義務付けられています。・特殊建築物等定期調査
・建築設備定期検査
・昇降機(エレベーター)定期検査
・消防用設備等点検
・専用水道定期水質検査
・簡易専用水道管理状況検査
・自家用電気工作物定期点検
出典
国土交通省 – マンション管理標準指針 コメント 四 建物・設備の維持管理(114)法定点検はその種類に応じた有資格者が行う必要があり、その結果を管轄の役所に報告する義務があります。
もし管理会社が法定点検や必要な手続きを怠った場合、オーナーが法的責任を問われるリスクがあります。また先に述べたように、法的点検を行うことで、事故や故障を未然に防いで入居者の安全を担保することができるため、信頼できる管理会社を選ぶことが重要です。
目先の「安さ」とサブリース契約は鵜呑みにしない
不動産管理会社を選ぶ際には、管理会社の評判や過去の実績、プロパティマネジメント(PM)業務とビルメンテナンス(BM)業務の両方をしっかりとカバーしているか、料金設定や契約条件を慎重に確認し、検討しましょう。
1. 安価な管理費に注意
管理費用の相場は、物件の売上げの3%〜5%です。しかし、管理費が安価に見える場合、例えば巡回清掃費やエレベーター保守点検費など、別途請求される費用が隠れている可能性があります。追加費用の有無とその詳細を確認しましょう。また収益物件では、管理費だけではなく、修繕工事費なども考慮する必要があります。総合的なコストを確認し、慎重に精査することが大切です。
私が実際にご相談を受けた投資家にも、詳細を確認しないまま契約してしまい、管理費の二重取りなどの問題に直面しているケースもあります。
例えば、PM業務とBM業務を別々の会社が担当し、それぞれが管理費を請求しているようなケースです。
このようなケースは、一棟所有の方に比べて、キャッシュフロー・収益率、財務に対して鈍感になりがちな、区分所有の方に多く見受けられる印象があります。区分マンション投資の管理費は、BM業務がほとんどで、PM業務はほとんどありません。にもかかわらず、それぞれで5%ずつ(合計10%)を管理費で支払っており、そのためにキャッシュフローがマイナスになっているケースも実際に存在しているので注意が必要です。
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2. 契約解除条件の確認は必須!注意すべき「サブリース契約」
物件よっては、購入時にすでに管理会社が決められている場合がありますが、「管理委任契約」の場合には、購入後に管理会社を変えることができると認識してよいでしょう。
「管理委任契約」とは、物件所有者(オーナー)が物件の運営管理を管理会社に委託する契約です。
ここで注意したいのは「サブリース契約」の場合です。
サブリース契約とは
オーナーが物件を管理会社に貸し出し、管理会社がさらにそれを第三者に転貸する契約のこと。
管理委任契約では、物件の収益リスクはオーナーが負いますが、サブリース契約では、賃料の支払い責任や空室リスクを管理会社が負い、オーナーには空室時でも賃料が保証がされます。
安定した収益が図れることは大きなメリットにように感じられますが、サブリース契約には以下のようなデメリットがあります。
- 賃料減額リスク
サブリース業者は、契約時に提示した賃料を後に減額することがあります。市場の賃料が下落したり、空室リスクが高まったりすると、オーナーに対して賃料の引き下げを求めてくるケースがあります。入居付けを行わずに、安易に賃料の引き下げをすることは好ましいとは言えません。 - 空室リスクの過小評価
サブリース契約は空室リスクがないと感じられるかもしれませんが、実際にはサブリース業者がリスクをカバーしているだけです。業者が経営不振に陥ると、オーナーがリスクを再び負うことになります。 - 契約解除リスク
サブリース業者が業績悪化などの理由で契約を一方的に解除することが可能な契約内容の場合、オーナーは想定外に空室リスクを負うことになります。契約内容をよく確認し、解除条件を理解しておくことが重要です。 - メンテナンスや管理に関する不透明性
サブリース業者が物件の管理を行う場合、その品質や対応が十分でないことがあります。オーナーが直接関与できないため、建物や部屋の管理状態が悪化するリスクがあります。 - サブリース業者の倒産リスク
サブリース業者が経営破綻した場合、契約は無効になる可能性があり、賃料収入が途絶えるリスクがあります。 - 長期契約のリスク
サブリース契約は長期にわたることが多く、その間に市場の家賃相場が上昇した場合でも、契約時の賃料で固定される可能性があります。結果的に、相場と比較して収益が低くなるリスクがあります。 - 法的トラブルのリスク
サブリース契約は契約内容が複雑であり、業者とオーナーの間でトラブルが発生することがあります。特に契約解除や賃料引き下げに関して問題が発生することがあります。
サブリース契約は賃貸借契約の一種であるため、契約の縛りが強く、多くの場合、契約解除には厳しい条件や解約金などのペナルティが設定されています。そのため、収益物件を購入する際には、サブリース契約が付いているかどうかを確認し、必要に応じて解除することが推奨されます。
カイロスマーケティングでも、我々が販売した物件に対して、主にスタートアップの投資家向けにサブリース契約を結ぶことがあります。
その場合は、スタートアップの方で稼働が安定するまではサブリース契約を結び、その後いつでも解除できると定めています。しかし、先に述べたように、ペナルティを設けないサブリース契約は珍しいため、不動産のプロである管理会社が法的には弱い立場になってしまうこと自体がオーナー(投資家)にとってはリスクになりうるかもしれません。
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「何かがおかしい」と感じたら、他の管理会社へ相談を
不動産投資で損をしないためには、管理会社選びが非常に重要です。どの管理会社とどのように契約するかで、収益が大きく左右されることがあります。キャッシュフローがマイナスになっていたり、修繕工事費で年間でショートするような場合は、不動産管理会社との契約内容を確認し、場合によっては契約内容の見直しや管理会社の変更を検討しましょう。
不動産管理会社を選ぶ際の基準は、業務内容の詳細や契約条件、費用の透明性などをしっかりと確認することが重要ですが、見落としや誤解が生じやすい部分が多くあります。信頼できるプロに相談することで、専門的な視点から適切な管理会社を選ぶ手助けを受けることが賢明です。
カイロスマーケティングでは、自社販売の物件は勿論ですが、他社で購入された物件の管理に関するご相談をお受けし、賃貸管理をお任せいただくケースも増えております。いつでもお気軽にご相談ください。