集合住宅特有の費用として住宅ローン以外に毎月出ていく固定の支出、管理費および修繕積立金。
もちろん、不動産投資用の物件においてもそれは例外ではありません。
管理費は賃貸物件においても日常的に支払いが発生するため、比較的イメージが湧きやすいランニングコストですが、では修繕積立金はどうでしょう?
字面から、ある程度は「おそらく、こんなことに使う費用ではないか」と類推できるものの、実際のところ具体的な使い道をスッと思い描ける人は、案外少ないのではないでしょうか。
マンションの「今」を支える管理費、「未来」に備える修繕積立金
管理費とは、名は体を表すとおり、マンション内外の住環境の維持のためにかかる、今まさに必要となる費用。
エレベーターやゲストルーム、エントランス、駐輪場などの共用施設の清掃や点検、共有部分の光熱費や電球などの備品代、建物の周りに配置された植栽の剪定、マンション管理人に支払う報酬などに充てられます。
一方、修繕積立金とは、こちらもマンション内外の住環境の維持のためにかかる費用であることには変わりはないのですが、将来かかるであろう費用を区分所有者全員で積み立てておく、つまり未来に必要となる費用になります。
建物の外壁やベランダなどの塗装、共用部分の修繕、エレベーターや立体駐車場などの設備の修理および入れ替え、自然災害などが原因の予期せぬ修復費用などに備える準備金としてプールされます。
来るべきマンションの「人生100年時代」を支える、修繕積立金の重要性
国土交通省発表の資料を紐解くと、国内のマンションにおける平均寿命は68年であると推定した研究結果が明らかになっています。
したがって、適切なメンテナンスを怠らなければ、その寿命は100年以上を数える可能性も大いにあります。
とはいえ、どれだけ頑丈なマンションであったとしても、外壁や屋根、給排水設備など、築年数の経過に伴う劣化は避けられません。
安心して快適に住み続けられるマンションを維持するためには、区分所有者全員が当事者意識を持ち、修繕積立金の重要性を十二分に理解し、約12〜15年ごとを目安に実施する大規模修繕工事に計画的に備える必要があるのです。
なぜか値上がりしてしまう、修繕積立金の2つのカラクリ
さて、そんな修繕積立金ですが、立地と総戸数によって、金額には大きく開きがあります。
こちらも国土交通省のまとめたガイドラインによれば、専有面積当たりの修繕積立金額(月額)の平均は、20階未満の建物の場合で252~335円/㎡・月、20階以上の場合で338円/㎡・月。
専有面積を60㎡とした場合、15,120〜20,280円/月となります。
ところが、物件購入後にこの金額が値上がりするケースが往々にして存在します。
なぜ、そんなことが起こりうるのでしょうか?
理由としては、大きく2つ考えられます。
1. 「段階増額積立方式」が採用されている
修繕積立金の徴収方法が「段階増額積立方式」の場合、そもそも将来にわたって段階的に積立金額が増額される仕組みになっています。
購入時のランニングコストを低く設定して販売しやすくするために採られることの多い手法ですが、ベースが低額になっているため、どこかのタイミングで増額していかなければ、2回目以降の大規模修繕工事の際に、費用が枯渇する事態に陥ります。
2. 長期修繕計画で当初見積もられた金額と現在の見積金額に乖離がある
長期修繕計画が作成された分譲前と現在では、当然ながら必要となる修繕内容や工事の見積もりは少なからず変わってきます。
また、円安や社会情勢の変化により、近年住宅の建築コストは上昇傾向にあります。
海外から住宅設備を運ぶ物流コストも上がっており、建築現場の働き手が不足するようになれば、人件費も上がる可能性もあります。
たとえ計画どおりに修繕積立金を徴収していたとしても、修繕積立金の増額を余儀なくされるパターンは大いに考えられます。
不動産投資物件における「貯金」、としての修繕積立金
日本経済新聞の2018年時点での調査では、全国の物件のうち、じつに75%ものマンションにおいて、修繕積立金不足が起きていると報じています。
もはや、どの物件にとっても対岸の火事ではないことを強く留意しておく必要があるでしょう。
冒頭、管理費はランニングコスト、と記しましたが、対して修繕積立金とは、ランニングコストを「生活費」になぞらえれば、いわば「貯金」にあたります。
日々キャッシュフローを見据えたコスト計算を行いながら、日常生活を営んでいるように。
資産形成を見据えた不動産投資においても、管理費と修繕積立金の意味と目的を正しく理解した上で、その運用を絶えず最適化していくことは、投資家として必須のアプローチと言えるのではないでしょうか。
なお、カイロスマーケティングで取り扱う不動産投資用の主な物件は、区分所有者が他にも存在する1室ではなく、1棟単位になっているため、区分所有者の滞納による管理費や修繕積立金のショートも発生せず、不動産投資における運用資産のキャッシュフローの25%ほどをストックしておけば、問題なく運用できる仕組みになっています。