今年(2022年)に入って総務省が発表した『住民基本台帳人口移動報告』によれば、2021年における東京都の転出超過数は5,433人、とりわけ東京23区においては1万4,828人、という結果に。
なお、東京23区が転出超過となるのは、日本人に限定すれば1996年以来、とのこと。
これはもちろん、テレワークの浸透により通勤の必要がなくなったことに加え、人口が密集した都市環境における新型コロナウイルス感染のリスクを忌避した層が都内を脱出する傾向が高まっており、かつ地価の高止まりや建築材の高騰による住宅価格の上昇も寄与している、と考えられます。
そもそもコロナ禍に始まったわけではない、東京の転出超過の実態
では、都内を離れた転出者がどこへ向かったのかと言えば、
最多となる神奈川県の9万6,446人を皮切りに、埼玉県が7万8,433人、千葉県が5万8,485人と、関東近郊3県だけで実に全転出者の55%強を占めています。
このことが暗に示しているのは、都市部からまったく切り離された地方へと移り住み、ライフスタイル自体をチェンジする、というパラダイムシフトが起こっているわけではなく、「何かあればすぐに都心に向かうことができる」ほどよい距離感で、ひとまずはこれからの様子を伺っているフェーズである、というのが実情ではないでしょうか。
そもそも、東京都の転出超過は、今回が初めてというわけではありません。
1955年以降、日本は高度経済成長期に突入。
都心への一極集中が進み、当時の東京都への転入超過は年間20万人を超える規模で推移していましたが、大気汚染などの環境悪化に伴い、一転して居住地を郊外に求める動きが活発に。
1967年に初めてとなる転出超過を記録、1973年には17万を超える人々が東京を離れています。
以降、1985年の一時転入超過を除き、1996年まで転出超過が続きます。
つまり今回の転出超過は、約26年ぶりとは言いつつも、なんら珍しいことではないのです。
一過性のトレンドに過ぎない、"ワーケーション"というワークスタイルの現実
誰もがその素性を知り得ぬウイルスに相対し、著しく行動が制限され、あたかもディストピア(反理想郷)の如く都市部が閑散とした2020年。
かつて、これほどまでに「東京に居る意味」を問われたことがはたしてあったでしょうか?
とはいえ、本社を東京から地方に移した企業の動向がセンセーショナルに報道された一方、新型コロナワクチンの導入によりテレワークを継続する企業が減少していること、そもそもテレワークに限界を感じているシーンが顕在化してきていることから、結局のところ、ロケーションフリーなワークスタイル(ワーケーション)は一過性のトレンドに過ぎない、という事実が2022年現在、徐々に浮き彫りになってきています。
そう、今まで以上にその生活に利便性や機能性が求められる中、新型コロナワクチンの開発と普及が進むことにより、今後のより一層の都心への回帰は必然なのです。
コロナ禍を経て、なお一層輝きと価値を増す東京の不動産
中長期的に見て、人口の減少が加速していくであろう日本。
その総人口は、2026年に1億2,000万人を下回り、2048年には9,913万人、そして2060年には8,674万人になると推計されています。
当然の帰結として、減りゆく人口は、財源を圧迫し、利便性の高いところにコンパクトにまとまっていきます。
そうしないと、インフラを維持できないからです。
かくして、引き続き続いていくであろう東京一極集中は、東京という不動産の価値の絶対性の証左にほかなりません。
「全国新築分譲マンション市場動向2021年」(不動産研究所)によれば、2021年の首都圏の新築マンションの平均価格は、過去最高となる6,260万円を記録。
東京23区だけで見れば、平均価格は8,293万円と、約30年ぶりに8,000万円を超える高水準となっています。
利便性が高く、将来的にも売却の見通しが立てやすい都心部の物件は、このコロナ禍においても、依然として高い人気を誇っています。
したがって、一過性の情報に惑わされることなく、対局を見極め、投資対象となりうる物件を見抜くこと。
そして、実際に利益を生み出せる構造の事業になるように、綿密に設計、運営するための適切なコンサルティングが行われることが、不動産投資にとってのベストな選択になると言えるでしょう。