マンション投資で資産が増やせると分かっていても、やはりリスクの存在が気になります。マンション投資には幾つかの代表的なリスクがあり、その1つが価格下落リスクになります。
そこで今回は、マンション投資のリスク低減策として、あえて築古物件を購入し、価格下落リスクを抑える戦略を紹介します。
なぜ価値は下落するのか?
新築・築浅マンションなどの収益物件は、年々不動産価値が下落していきます。その理由は簡単で、新築物件は建物が完成した段階で、使用に耐えうる年数(耐用年数)が決まっており、時と共に耐用年数が減る中で、建物の価格が下落していくからです。不動産に限らず、車などの耐久消費財も新車販売の時点から価格の下落は始まっています。
もちろん、収益物件の構造、例えば鉄筋鉄骨コンクリート造なのか、木骨モルタル造なのかによって耐用年数も異なりますが、例えば一般的な築5年未満のRC建物の場合、不動産の価値は8割が建物、2割が土地となっています。その8割分の資産は耐用年数の短縮と共に価値が大きく下がっていくのですね。
上物の減価償却の仕組み
収益物件には耐用年数が決まっています。その耐用年数の残りの長さによって収益物件の上物の価値が決まっていくという考え方は、不動産の減価償却の仕組みを理解するうえで欠かせません。
住宅用のアパートやマンションは、20年~47年など何十年も世の中に存在し続けます。普通であれば耐用年数の分だけ、将来にわたって利益を上げると評価されます。長い時間にわたって繰り返し多くの人に利用され、繰り返しオーナーに収益をもたらしてくれる、その未来の価値も含めて収益物件には値段がついているのですね。
仮に2018年1月に鉄骨鉄筋コンクリート造で新築の住宅用物件Aを1億円で購入し、全額の支払いを済ませたとしましょう。
しかし、2018年に収益物件Aから得た不動産収入の経費として、購入費用の1億円を初年度に全額計上しようと思っても、認められません。収益物件Aは、例えば47年の寿命の長さを含めて1億円と評価されています。2018年に得た利益は、47年の寿命を持つ物件の最初の1年で得た利益にすぎません。残り46年分の寿命を差し引いた物件の(1年分の)価値しか、その年の経費として認めてもらえないのですね。この耐用年数の長さに応じて、収益物件の取得経費を少しずつ計上していく行為を、減価償却と言います。
土地は価値が下がらない
しかし、マンションやアパートが建つ土地そのものについては、寿命がありません。マンションやアパートなどの収益物件で、大きく価値が下がる部分は、土地ではなく上物になります。収益物件は土地の上に建物が建っていて、その上物は耐用年数の短縮と共に価値が下がっていきます。
一方で土地には耐用年数がありませんから、土地の値段が年を追うごとに下がっていくといった価値の下落は起こりません。仮に耐用年数が20年と定められた木骨モルタル造のアパートが新築から26年経過していたとすれば、もはや上物にはほとんど価値がなく、土地の値段だけが(土地価格の上下はあるものの)そのまま残っていると考えられるため、かえって価格下落は起きにくいのですね。
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だからこそ築古物件投資
以上の点を踏まえると、新築、あるいは築浅の収益物件ではなく、あえて耐用年数を過ぎた築古の収益物件に投資するという選択肢も、大いに有効的だと分かります。
築年数が古いと、簿価上、評価上の建物価格が下がるところまで下がっているため、将来的な価格下落リスクを回避できます。逆に土地の値段が相場の回復で上がれば、転売で利益を得るという出口戦略も見えてきます。
収益物件の投資は一般的に築浅物件への投資がイメージとしてありますが、将来的な価格下落リスク、賃料の下落リスクなどを考えると、あえて築古物件に投資するという主観に流されない意思決定も重要になってくるのですね。