コロナウイルス感染拡大もようやく一段落の兆しを見せたかに思える2022年、世界的に経済活動の回復が期待されています。
そんな中、テレワークの普及により在宅時間が長くなったことなどを背景に、住宅やマンションの着工戸数が前年を上回る状況が続き、リフォーム需要も高まってきました。
一方、木材をはじめ、鉄鉱石やアルミニウムなどの原材料価格が高騰していることから、それに呼応するように建設費も上昇。このトレンドがこのまま続けば、今後のマンションの販売価格にも影響を及ぼす可能性がありそうです。
木材のおよそ7割弱を輸入材に頼る日本を直撃した「ウッドショック」
そもそも、現在起こっている木材価格の高騰は、1970年代に発生した「オイルショック」になぞらえて「ウッドショック」と呼ばれ、建築用木材の供給が需要に追いつかないことに起因しています。
その先鞭をつけたのが、コロナ禍の影響により住宅建設が一時落ち込んだアメリカ。
膨大な財政出動と低金利政策により、リモートワークで自宅にこもるようになった市民が住宅を郊外に新しく購入したり、リフォームを行ったりする流れが進むようになり、とくに2020年後半以降、例年の水準を大きく上回る住宅建築需要が見られます。
ところが、もともと虫害や山火事などの影響で原材料が不足しており、さらにはコロナで製材所の休業を余儀なくされていた中でのこの動きに、木材価格が大きく影響を受ける形に。
そして、住宅の建築などに使われる木材のおよそ7割弱を輸入材に頼る日本にも、このウッドショックが直撃。
海外依存度が高い日本のサプライチェーンの脆弱性を、あらためて浮き彫りにしています。
世界的景気の回復に追いつけない、日本の所得事情
では、今すぐにマンションの販売価格に影響があるかというと、現在建設中のマンションにはすでに仕入れ済みの資材を使っているため、いきなり価格に反映されることはなさそうです。
とはいえ、原材料価格の高騰に加え、土地の価格も上昇しており、アメリカをはじめとして世界全体の経済状況が今後の資材価格にどのくらいのインパクトを与えるのか、先行きはまったく見えません。
加えて、日本の賃金はここ30年間伸び悩み続けています。
OECD(経済協力開発機構)によれば、国ごとの平均年収は、1991年を100とした場合、日本は2020年の時点で100.1。
それに対して、先進各国は2020年の時点で以下のようになっています。
– アメリカ:249.1
– イギリス:243.4
– ドイツ:200.5
– フランス:181.6
先進各国の賃金が大きくアップする中、世界的な物価の上昇に日本の所得が追いついていない現状があります。
ワクチン接種のスピードや医療体制の整備の観点から、海外経済が先行して回復を遂げる中、日本国内の景気は回復していないのに、物価だけが上がってしまい、生活の負担だけが増すという負のスパイラルが起こっているのです。
賃貸物件へのニーズに応えられる、プロフェッショナルな目線の必要性
マンションの販売価格が上昇の気配を見せつつも、賃金は頭打ちとなると、自然と「賃貸」という選択肢のニーズが高まります。
そこで、入居したくなるポイントとなるのは、その賃貸物件が、不動産投資を行う人ではなく住む人にとってのニーズをいかに満たしているかに尽きます。
「自分」が住みたい街ではなく、「住む人」が住みたい街であること。
その適切な場所で、必要な設備が常に保たれていること。
つまり、不動産投資には物件の価値を冷静に判断し、打つべき施策を最良のタイミングで実施できる、まさにプロフェショナルな目線が必要だと言えます。